健康経営推進に向けて

健康経営をはじめる中小企業の皆様へ

健康経営が注目される背景

~高齢化社会への対応~
日本では少子高齢化による労働力人口減少により、人手不足に陥っている企業・業界が多くあります。そのため既存の労働力を長期にわたって確保し、一人ひとりの仕事の生産性を高めることが必須課題となっています。こうした状況を踏まえ、健康経営によって従業員の健康を管理し、離職率を減らしたり休職を防ぐとともに、職場環境を改善して、生産性を高めるだけでなく、社会的イメージを高める効果ががあると感じている経営者も増えています。

働き方改革による推奨

企業の生産性の向上に関しては、「働き方改革」によっても推奨されています。
従業員の皆様が、健康状態を維持するために積極的に投資することが提唱されており、官民が一体となって日本企業全体の生産性や活力を向上させることが求められています。

健康経営のメリット

健康経営を実践するメリットをまとめてみますと、以下の3点が挙げられます。
• 生産性向上
• 職場活性化
• 企業イメージ向上
心身の健康は従業員のモチベーションに良い影響を与えます。内部コミュニケーションの円滑化にもつながり、結果的に良いチームワークを生み、企業価値向上にもつながります。
また、最近では企業の福利厚生に注目が集まるケースが増えています。健康経営の実践によって従業員の健康に関心ある企業であることをアピールすることにより、優秀な社員の確保や競争力の強化にもつながります。

労働安全衛生の国際標準は?

厚生労働省のホワイトマークをはじめ、さまざまな取り組みがされていますが、国際的な標準規格を発行する非政府組織「国際標準化機構(ISO)」では、ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)を国際標準として定めています。従来、OHSAS18001という規格がありましたが、ISO45001がそれに代わる国際標準として制定されました。同じISO規格であるISO9001やISO14001と用語や定義を統一していることから、すでにISOの認証を受けている企業ではこれらを統合的なマネジメントシステムとして運用することができます。

国際標準が定まった経緯

労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格の検討が始まったのは1995年のことです。しかし、当時は「将来的なニーズはあるかもしれないが現時点では不要」という結論に達し、規格の発行は見送られました。英国規格協会が労働安全衛生マネジメントシステムに関する国内規格であるBS8800を発行してから状況は変わり始め、世界各国での労働安全衛生マネジメントシステムの標準規格を求める声が高まり始めました。そして、イギリスが中心となって国際的なコンソーシアム(共同事業体)が発足し、1999年に発行されたのがOHSAS18001です。各国でOHSAS18001を基準とした労働安全衛生マネジメントシステムの認証制度が始まりました。OHSAS18001は2007年に改訂版も発行されています。OHSAS18001の認証取得件数の増加もあいまって、再びISOによる国際規格の発行が求められるようになりました。そして2013年、ISO内に労働安全衛生マネジメントシステムの規格を開発する委員会が設置され、複数回にわたる国際的な会議や投票の結果、承認され規格として発行されたのがISO45001です。このような経緯から、OHSAS18001はISO45001が生まれるきっかけとなった前身的な存在と言えます。ISO145001の要求事項には、OHSAS18001からの流れを汲む内容も数多く含まれています。
1.労働安全衛生の管理体制の構築
労働安全衛生マネジメントシステムの枠組みを活用することで、今まで分散的・形骸的になっていた内部管理機能を統一的かつ効果的な仕組みに落とし込むことができるようになります。会社の性質に応じた労働安全衛生上の問題や課題を把握しやすくなり、迅速な対処や効果的な対応策・防止策の実施が可能となります。
2.労働安全衛生にかかわるコストの削減
統一化、効率化された労働安全衛生マネジメントシステムを構築することで業務が効率化し、今まで費やしていた人的資源や経済的資源などのコストを削減することが期待できます。その分、本来注力するべき事業に資本を投下することができ、無駄な雑務から解放された従業員の満足度の向上も見込めるでしょう。
3.顧客やステークホルダーの信頼性向上
国際規格であるISOの認証を取得するということは、労働安全衛生の改善を継続的に実現し続ける企業であると世界的なお墨付きを得ていることを証明するものです。当然、ただ「私たちは職場の労働安全衛生に関する仕組みをしっかりと構築しています」と主張するより「労働安全衛生に関する国際規格の認証を取得しています」と主張した方が信用度は高いでしょう。取引先の選定にISOを取得しているかを判断材料とする企業も多く、ISO45001の取得の有無が業績に影響してくる可能性は十分にあり得ます。

3つのポイント

ISO45001の取り組みにおいては以下の3点がポイントとなります。
1.トップ主導による取り組み
労働安全衛生マネジメントシステムは、全社が一体となって取り組むことが求められます。そのため、まず最初に経営者などトップマネジメントにあたる人が主導して方針を打ち出し、明文化し、社内に周知していく必要があります。また要求事項の中には、マネジメントにおける全体責任、説明責任のほか、各種支援や促進、あるいは取り組みの中で働く人が受けうる報復から擁護するなど、トップが自ら実施することを求められる内容も数多く含まれています。

2.「働く人」の参加
ISO45001の要求事項には、
・働く人のニーズ及び期待の理解
・働く人の参加
など「働く人」というワードがよく出てきます。これは単なる「労働者」よりも枠組みを広く捉えているためです。労働者の場合、対象となる人は企業に賃金で雇われた被雇用者に限定されます。しかしISOではより広範囲の関係者を労働安全衛生マネジメントシステムで扱うべきだとしているわけです。被雇用者だけではなく、事業者、管理職、請負業者、派遣労働者、ボランティア、インターンシップなど組織の事業活動に関わる「働く人」すべてが安全かつ健康に働ける労働安全衛生マネジメントが求められます。
3.PDCAサイクルの循環
ISO45001では、「労働安全衛生マネジメントシステムの根底にあるアプローチの基礎はPDCAにある」と記されており、PDCAがISO45001の要点であることが分かります。
Plan(計画)では、組織の状況および働く人や利害関係のニーズ・期待を理解し、そのデータを元に労働安全衛生マネジメントシステムをどの範囲に適用するか決定します。また、労働安全に関わるリスクや機会を判断・評価し、組織の労働安全方針に沿った結果を出すために必要な目標やプロセスを確立します。
Do(実行)では、計画どおりに労働安全衛生マネジメントを進めることが求められます。
Check(確認)では、労働安全衛生方針や目標に照らして活動やプロセスを監視・測定し、その結果を報告します。
Act(見直し)では、測定した結果を元により目標に沿った成果を出せるよう改善策を策定し、継続的な改善を図ります。
この4つを常に循環させてより働きやすい職場へと変えていくことが労働安全衛生マネジメントシステムの基礎であり目的となります。